年金法改正。マクロ経済スライドとは何か調べてみた。

マクロ経済スライドタイトル
スポンサーリンク

平成28年11月25日に、年金改革関連法案が衆院厚生労働委員会で可決されました。

今回の年金改革は、年金支給額の伸びを賃金や物価の上昇分よりも押さえる「マクロ経済スライド」が柱となっています。

では、そのマクロ経済スライドとは何でしょうか。分かりやすいようにまとめてみました。

マクロ経済スライドとは

従来の年金制度では、賃金と物価が上昇した分だけ年金額は増えていました。

ところが少子高齢化の時代になると困った状況になります。年金の加入者が減少したうえに、平均余命の伸びによって支給額が多くなったのです。

このままでは年金制度の仕組みが成り立たない…

さあ、そこで登場するのが「マクロ経済スライド」です!

マクロ経済スライドは、「賃金や物価の上昇によって増える年金額」から「スライド調整率分」を減額することによって年金額の上昇を抑えます。

これにより、少子高齢化による収入の減少と支出増加のバランスが調整されるようになります。

スライド調整率の働き

スライド調整率とは、「公的年金を払う人の減少率」と「平均余命の伸びを勘案した一定率」の合計です。

「公的年金を払う人の減少率」と「平均余命の伸びを勘案した一定率」
・「公的年金を払う人の減少率」は2年前から遡って3年間の平均です。
例えば平成28年度の減少率は、平成24年度から平成26年度までの平均になります。

・「平均余命の伸びを勘案した一定率」は一定で、0.3%程度です。

平成27年は「公的年金を払う人の減少率」が0.6%、「平均余命の伸びから考えた一定率」は固定で0.3%なので…
0.6 + 0.3 = 0.9
で、スライド調整率は0.9%となりました。

スライド調整率は、賃金や物価が上昇しても年金額の上昇を抑える働きをします。

では、もし賃金や物価が上がらなかった場合はどうなるのでしょう。

賃金や物価が上がらなければ年金額も上がりません。その上、さらにスライド調整率分で減額されてしまったらたいへんです!

そこで、スライド調整率は次の3つのパターンによって適用の仕方が変わります。

  1. 賃金や物価が大きく上がっているとき
  2. 賃金や物価が少し上がっているとき
  3. 賃金や物価が下がっているとき

この3つのパターンを順に説明していきたいと思います。

1 賃金や物価が大きく上がっているとき

賃金・物価上昇率が2.3%、スライド調整率が0.9%のときを考えてみます。

この場合は、賃金や物価の上昇率がスライド調整率を上回っていますね。

【グラフ1】
マクロ経済スライド(上昇率大)

赤色が従来の年金額です。賃金や物価の上昇しているので、年金額もその分上がっています。

青色がマクロ経済スライドを適用したときの年金額です。スライド調整率の分だけ年金額が抑えられています。

このように、賃金や物価の上昇率がスライド調整率よりも高い場合は、スライド調整率分すべて減額されます。

2 賃金や物価が少し上がっているとき

続いて、賃金・物価上昇率が0.5%、スライド調整率が0.9%のときを考えてみます。

この場合は、賃金や物価は上昇していますが、スライド調整率よりも低いですね。

【グラフ2】
マクロ経済スライド(上昇率小)

マクロ経済スライドでは、前年の年金額を下回る場合のスライド調整率分は減額されません
ということで、年金額は青色の部分になります。

3 賃金や物価が下がっているとき

最後に、賃金・物価上昇率が▲0.5%、スライド調整率が0.9%のときを考えてみます。

この場合は、賃金や物価上昇率がマイナスとなっています。

【グラフ3】
マクロ経済スライド(上昇率マイナス)

マクロ経済スライドでは、賃金や物価の上昇率がゼロかマイナスのときはスライド調整分は減額されません
ということで、年金額は青色の部分になります。

結果としてスライド調整率とは

【グラフ1】と【グラフ2】を見てみましょう。
この二つのグラフは、賃金や物価が大きく上がっているときと少し上がっているときのグラフです。

この二つのグラフから、

  1. 従来の年金制度と比べれば減額されている(赤と青を比べている)

  2. マクロ経済スライドによって年金額が前年を下回ることは無い(緑と青を比べている)

ということが分かります。

「年金額は減額されているけれど前年を下回ることは無い」ということは、言い換えると、「年金額は緩やかに上がる」ということになります。

この辺りが分かりにくいんですよね。

  • 従来の年金制度よりは減っている
  • 前年に対しては緩やかに増えている

見方によってずいぶんとイメージが変わります。

そういえば、今回の年金改革法案を検索すると、「年金カット法案」という言葉がヒットします。

民進党が「年金カット法案」と言っているのは、従来の年金制度と比べれば減額されていることを言っています。

自民党は「将来年金確保法案」と言っています。前年の年金額とマクロ経済スライド適用の年金額を見ると年金の上昇額が抑えられています。

支給される年金額が抑えられているということは、少子高齢化で現役世代が減少しても年金制度が存続できることにつながります。

これも見方の違いですね^_^;

スライド調整率のキャリーオーバー

スライド調整率は上記で説明した内容の他に、キャリーオーバーというものがあります。

上記の【グラフ2】のときが問題です…

賃金や物価の上昇率が少なかった場合は、スライド調整率の減額があっても前年の年金額より下がることは無かったですよね。

ところが、その減額されなかった分は翌年に持ち越されます。これがキャリーオーバーです。

どんな感じになるか例を挙げてみます。

賃金や物価上昇率が、今年に比べて1年後に0.5%上がり、2年後に1.5%上がったとします。スライド調整率は0.9%です。するとこうなります↓

マクロ経済スライドのキャリーオーバー

1年後で減額されなかった0.4%分が、2年後に持ち越されています。

そのため1.5%の上昇だったものが、0.9%とキャリーオーバーの0.4%を減額して、0.2%の上昇となります。

では、このキャリーオーバーの働きは何を意味しているのでしょうか。

賃金や物価の上昇率が低いとき(デフレのとき)は、スライド調整率分の減額はされません。これではデフレのときにはマクロ経済スライドは機能していないことになってしまいます。

そこでキャリーオーバーをすることによって、スライド調整分の減額を後にもっていくことにより、デフレ環境の元でもマクロ経済スライドを実行できるようにしています。

つまり、キャリーオーバーはマクロ経済スライドを着実に実行していくための仕組みと言えます。

スライド調整率の見通し

スライド調整率は年金を払う人の減少率と関係ありますから…

今後は少子高齢化によって、スライド調整率は高くなっていきます

厚生労働省にスライド調整率の見通しがあったのでグラフ化してみました。(元データは116ページです↓)

国民年金及び厚生年金に係る 財政の現況及び見通し(詳細結果)

マクロ経済スライドの調整率見通し

厚生労働省「出生低位、労働市場への参加が進むケースでのスライド調整率の見通し」より

上のグラフでは平成42年くらいまでは横ばいですが、それ以降は急激に上昇し、その10年後には約2倍になっています。

マクロ経済スライドの適用期間は、当初20年を想定していましたが、長引いて30年を超えることもありえるようです。

スライド調整率が高くなるということは、減額される額も大きくなると言うことにつながります。

適用期間が長引いて、スライド調整率が現在の約2倍になることも覚悟しておかなければいけませんね…

マクロ経済スライドの調整期間
マクロ経済スライドによる調整は、年金財政の収支のバランスを保つことができるまで続けられます。
調整期間は15〜20年程度を見込んでいますが、調整期間は長くなることがあります。

最後に

マクロ経済スライドによって、年金の支給額は抑えられます。マクロ経済スライド適用前と比べると減額されるのも事実です。

ただ、少子高齢化によって年金制度が成り立たなくなるのが一番困ります。マクロ経済スライドは必要なので仕方ないですね。

それにしても、少子高齢化の影響は大きいですね!

この対策ができないと、年金は減っていく一方です(T-T)


【関連記事】

確定拠出年金を分かりやすく説明。メリットがあるかは疑問

高齢ドライバーの事故。免許返納と定年制について考えてみた。

CoCo壱が9年ぶりに値上げ!そこでお得なココイチカレーの食べ方

小型二輪車が普通免許で運転できる?規制緩和はあるのか

スポンサーリンク
スポンサーリンク

ABOUTこの記事をかいた人

柊にわか(ひいらぎ にわか)といいます。 自分が成長するのが好きな40代の男です。 パソコン、ジョギング、料理、お笑い、映画、ディズニー… ジャンルを問わず、興味をもったら首をつっこんでしまいます。 成長するのが止まったら自分の人生は終わりだろうなぁ。